工房を訪ねて(ふくら舎スタッフが直接工房へお伺いして直に話を聞いてきた。)

工房を訪ねて〜照屋窯・照屋佳信さん 1〜


文/中江裕司(映画監督・ふくら舎仕入担当)

 今から三十年以上前、沖縄に移住してきたばかりの私は、ふらりと那覇市壺屋のやちむん(焼き物)通りを歩いていた。とある民芸店で、気になる湯飲みがあった。いきいきとした魚の文様が印象的。きれいに焼かれたものではなく、あちこちが汚れたようになっていたが、絵柄はとても大胆。少しくらい乱暴に扱っても壊れないような強さと素朴な美しさがあった。それが登り窯で焼かれたものであることも当時は知らない。京都生まれの私にとっては、見たことがないような焼き物だった。気に入った私は、大学生にとっては、大金である千円を払って買い求めた。その器には、沖縄そのものが凝縮されているようだった。その器が、沖縄というものを私に教えてくれた。後に人間国宝になる金城次郎さんの湯飲みだった。

 それから20年余り。観光ブームに沸く沖縄、国際通りの土産物屋さんには、私を惹きつけたようなやちむんは少ない。沖縄人たちは、経済発展と引き替えに自分たちの魂を本土に売り渡してしまったのか。そんな時に、金城さんの湯飲みと同じ感覚に陥る皿を見つけた。何でもない三彩柄の小皿。金城さんと同じ素朴なたたずまいが私の魂をゆさぶった。安い。千円もしない。器の裏を見ても銘はない。店の人に聞くと、照屋佳信という人が、今でも登り窯で焼いていると教えてくれた。沖縄の魂は、なくなっていなかった。照屋佳信という名前が伝説のように私の中で響いた。


素朴さと大胆さを合わせ持つ照屋さんの器

 また十年ほどの時間が流れ、私が代表をつとめる桜坂劇場で、ふくら舎という沖縄のクラフトショップを開くことになったとき、沖縄の魂が宿ってないものは扱わないと決めた。世間に媚びない、沖縄の本当の魂を見せたかった。そのためには、照屋佳信さんのやちむんを店に並べる必要があった。照屋佳信さんのやちむんを見つけないと、店は開けないと勝手に思い込んだ。しかし、どこに窯があるのかもわからない。



旧知の陶工に聞くと、「照屋さんのやちむんは、いいよねぇ。昔の壺屋焼の匂いがするよ。あんなふうに焼ける人、少ないよねぇ。窯の場所はわかりにくいよ。先日、弟子が行ったけれど、すごい山道で大変だったらしいよ」と、だいたいの場所を教えてもらった。

 勇気を出して車を走らせる。畑を抜け、車は山道へ。家の気配がなくなった。地道に両側から草が覆いかぶさっている。車は何度も腹をこすりながら進む。これ以上進むと危険と思った時、草に隠れた看板のが見えた。車を降りて、草をかき分けて確認する。照屋窯という文字。さらに急な坂を下りると、前が開け大きな窯と工房が建っていた。当然、事前連絡はしていない。ドキドキしながら、工房をのぞいてみる。照屋さんらしき方がろくろをひいておられる。「照屋さんですか」と聞くと、軽くうなずかれた。私は、いっしょうけんめい照屋さんのやちむんが好きで、それをお店におきたいと説明した。「いいよ」と言葉少なにおっしゃって、奥を指さされた。奥には奥さんがおられた。「ちょうど、やちむん市に出した残りがあるから見ていったらいいですよ」と言っていただいた。私は、奥の部屋に無造作に置かれたダンボールを、一つ一つ開けた。素晴らしいお皿やマカイ(お椀)がたくさん出てきた。ダンボールを開けるたびに、新しい世界が広がった。私は、夢中になって、汗がしたたり落ちるのも気づかなかった。

(つづく)

照屋窯の窯出し前、無造作に器が並ぶ




















◇◇◇
照屋佳信さんの器は、沖縄桜坂劇場内ふくら舎2階や、ふくら舎オンラインショップでお求めになれます。
ふくら舎2階
沖縄県那覇市牧志3-6-10(桜坂劇場内2階)
営業時間:10:00〜20:00
お問合せ:TEL 098-860-9555



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