工房を訪ねて(ふくら舎スタッフが直接工房へお伺いして直に話を聞いてきた。)

工房を訪ねて〜上江洲茂生さん(茂生窯)2〜


文/中江裕司(映画監督・ふくら舎仕入担当)




 私が、厨子甕に夢中になっていると、上江洲茂生さんは、奥から赤絵の入った小ぶりな厨子甕を持ってこられた。

「これは、親父のために作ったジーシーガーミ(厨子甕)。私は高校生のときに、ジーシーが大好きになって、親父に欲しいと頼んだら、お前は私が死ぬのを待っているのかと、したたか怒られた。それでも忘れられずに壺屋焼の仁王窯に弟子入りした。五年くらい経って、師匠の小橋川永昌さんから厨子甕はお前が作りなさいと言われたときは、とてもうれしくてね。それ以来、四十年以上作り続けているよ。親父は、九十歳余るけど、今も元気だから、この厨子甕には当分入らんはずよ」。




 厨子甕は、陶芸が盛んな沖縄でも、今はほとんど作る人がいない。そのことを聞くと、「ジーシーは、ろくろを使わず型を取らないといけないから、時間がかかるさ。大きくて窯の中で場所も取るし。でもね、僕はジーシーが好きでね、これを作っている時が一番幸せさ」と、うれしそうに厨子甕をなでられた。「最近は洗骨もほとんどないさぁね。何でも日本風になってから。厨子甕を作るのは私が最後かもしれないよ」と、茂生さんは寂しそうに語られた。



 話が面白くて、仕事である仕入れが進まない。茂生さんの自宅の居間には、昔の壺屋焼の魅力がぷんぷんと匂ってくるヤチムンが並ぶ。派手さはないが、無骨な琉球人の魂が伝わってくる。私は気持ちが高ぶり、次々と仕入れる。




 気に入った八寸の大きいお皿の値段を聞くと、「ちょっと待ってよ、大蔵大臣に聞いてこようね」と、奥に行かれた。茂生さんは、作るばかりでご自分のヤチムンの値段はご存じないようだ。






 次に赤絵の花生けの値段を聞くと、「ちよっと待ってね」と、また席を立たれる。私は申し訳なくて、「値段表とかありますか」と聞くと、手書きであちこち書き足された暗号のような値段表を持ってこられた。私は何とか暗号を解読し、請求書も自分で書き、仕入れが終わった。



 帰ろうとすると、「こっちにおいで」と、工房に案内された。作りかけの小型の厨子甕があった。工房の裏には、立派な登り窯が鎮座していた。あまりに長居して仕事のじゃまをした私が帰ろうとすると、大蔵大臣こと奥様が、「もうすぐ窯出しがありますから、よければおいでください」と、暖かい言葉をかけていただいた。仕入れたヤチムンの入った段ボールを抱え、車に乗り込むと、玄関先まで茂生さんに見送ってくださった。「なんか離れがたいさぁ。窯出しにはおいでよ。あんたとは、はじめて会った気がしないさぁ」。と、とてもうれしい言葉。私が沖縄に来た三十年前には、茂生さんのような情け深い、それでいて厳しいウチナンチュがたくさんおられた。私は、その先輩達に育ててもらったようなものだ。そのことを、強烈に思い出しながら、別れをつげた。



【次回に続く】



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沖縄の心のこもった上江洲茂生さんの器やジーシガーミは、沖縄桜坂劇場内ふくら舎2階や、ふくら舎オンラインショップでお求めになれます。


ふくら舎2階
沖縄県那覇市牧志3-6-10(桜坂劇場内2階)
営業時間:10:00〜20:00
お問合せ:℡098-860-9555


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