工房を訪ねて(ふくら舎スタッフが直接工房へお伺いして直に話を聞いてきた。)

工房を訪ねて〜上江洲茂生さん(茂生窯)1〜


文/中江裕司(映画監督・ふくら舎仕入れ担当)


 実は、私、プロの映画監督になる前から、ヤチムンが大好きだった。ひょうきんで遊び心のある魚紋で有名な金城次郎さんのヤチムンに夢中になり、威厳があって優しさも怖さも兼ね備える島常賀さんのシーサーに心を打たれていた。




 しかし、自分が仕入れをする立場になって呆然とした。沖縄らしきもの、沖縄っぽいが心のないものが氾濫している。私の本職である映画でも同じだ。沖縄らしきまがい物の映画が次々に作られている。顔の見えない誰かが、沖縄っぽいものなら儲かるとささやいている。力強く素朴で美しいヤチムンを生み出していた沖縄人たちの魂は、どこにいってしまったのか。


 嘆いてもはじまらない。私は、「ふくら舎」をはじめるにあたって、沖縄の魂が宿ったヤチムンを仕入れるのだと車を北に走らせた。



 最初に訪れたのは、かねてより大好きだった上江洲茂生さん。工房を訪ねると、茂生さんが一人でろくろをひいておられた。何の連絡もせずに、気持ちだけで突然訪問した初対面の私を、陶芸家の上江洲茂生さんは、こころよく迎えてくださった。ちょっと照れた表情で通された自宅には、昔の壺屋焼を思わせるヤチムンが所狭しと並んでいた。







 私は感動した。ここには本物の沖縄があふれている。大胆なイッチン(白い線で盛り上がった模様)の尺皿。花の絵が描かれた渋い抱瓶(ダチビン・太ももにフィットする持ち運びしやすい沖縄独特の瓶)、使いやすそうな湯飲みや小皿などの雑器が、私を手招きしていた。



 特に目をひいたのが、ジーシーガーミ(厨子甕と呼ばれる沖縄の骨壺)。両手でも持てないくらいの大きな家型の厨子甕は、とうてい骨壺には見えない。側面は蓮の花で彩られ、屋根や土台も美しく彩色されている。屋根の上には、鯱が守っている。これぞ沖縄の芸術品と呼べるものだ。





 もともと沖縄は、火葬ではなく風葬。長くお墓の中に亡くなった人を入れておき、何年かして、骨をきれいに海水で洗う洗骨という儀式を行い、この素晴らしい厨子甕に入れて安置した。お墓も自宅以上に眺めのいいところに作った。生きている間よりも、亡くなってからの方が長いという、沖縄の死生観が良く現れている。特に上江洲茂生さんは、厨子甕作りの名人と言われている。洗骨の風習が少なくなり、厨子甕の需要が減った今でも、かたくなに作り続けている数少ない作家だ。高校生のときに厨子甕を見て魅せられ、壺屋焼の工房に弟子入り、それ以来40年以上作り続けているそうだ。上江洲さんは、「厨子甕はろくろを使えないので時間がかかる。大きいから窯の中で場所も取る。でも、厨子甕が好きでつい夢中で作っている。だけど、こればかり作っていると、大蔵大臣(奥さんのこと)に、怒られるんだよ」と、頭に指で角を突きだして、笑顔で言われた。



【次回に続く】





◇◇◇
沖縄の心のこもった上江洲茂生さんの器やジーシガーミは、沖縄桜坂劇場内ふくら舎2階や、ふくら舎オンラインショップでお求めになれます。


ふくら舎2階
沖縄県那覇市牧志3-6-10(桜坂劇場内2階)
営業時間:10:00〜20:00
お問合せ:℡098-860-9555


オンラインショップのトップページは、こちらからどうぞ。



工房を訪ねて



沖縄ざっか・アート・本 ふくら舎オンライショップ